猛禽類の本気 ハイタカとチョウゲンボウ 2022/11/17

新河岸-南古谷中間辺りでタカを見ました。寺尾遊水池から上流に向う遊歩道を歩いていると河畔林の中から飛び出してきました。

実サイズで切り抜き 明るさ等調節してあります

拡大した画像だと

茶色い若鳥のオオタカを見た後だったのでその個体の換羽が進んだものと思い込んでいました。全体的に茶色で翼の模様も成鳥よりはっきりしているのがオオタカ幼鳥だそうですので。(この投稿も後からの訂正なのですが)

しかしハイタカと見る方がほうがずっと可能性高いようです。尾が開いたときにオオタカは丸みを帯びるがハイタカは角張ること。翼の先の羽の開き方(翼先分離)が比較的強いこと。そして何より体色と模様です。全体に茶色、翼と尾の帯がくっきりしていることはハイタカの特徴でありオオタカでは現れない特徴でもあります。ただ白い眉班が確認できますがオオタカメスでは太くハイタカメスでは細いそうですがこれでは太く見えます。難しい。

オオタカと思い込んでいた別の理由が「大きかったこと」です。ハシボソガラスほどは余裕でありました。ハイタカでもタカはメスがオスより一回り大きいことや個体差もかなりあることは知識にはありましたがフィールドで応用はできなかったわけです。さらに一番の理由はお腹の模様です。各種ガイドブックではハイタカの成鳥は赤茶色の「細い一本線が連続して」並びます。ですがこの個体の模様は太く網目もようになっています。ここが全然違うと感じた決定的な点でした。

しかしそれも『新訂ワシタカ類飛翔ハンドブック』を調べ直すとp32にあるハイタカ幼鳥の特徴と同じでした。それによると幼鳥は体下面は茶のウロコ模様が並んでいて眉班も成鳥メスより白く太いです。よって私が見たのはハイタカ幼鳥として良さそうです。

しかし識別は難しいですね。なんせ遠いところを速いスピードで飛んでいてオスメス幼鳥と体色・模様が違い、しかもその模様にも大きさにも個体差があり、さらには・・・ガイドブックで正反対のことが書いてあったりする。とにかくたくさん自分の目で見ることが一番ですね。上を向いて歩こう!

さてハイタカが飛び出だしてきた辺りの木々の下には・・・

地面写してもピンボケの腕前

ドバトのものらしき羽が散乱していました。ハイタカでもドバトを獲物にできるのか。


その後さらに上流に歩いていくとまたタカが上空遠くに回っています。先ほどのハイタカなのか別のものかは今となっては分かりませんがオオタカとしておきます。カモたちを見たりイタチが出てこないか探したりしながら時々そのオオタカも見ていると、もの凄い高いところでいつからかチョウゲンボウが2羽オオタカにアタックを始めていました。双眼鏡で見ても小さくしか見えないのですがオオタカより二回りほど小型で長い尾とハヤブサ族のブーメラン型の翼を持ち間違いなくチョウゲンボウでした。オオタカの周りをスピードの有利を活かして飛び回りながら時折接近して威嚇するというような方法で、あまり動じず同じ付近に留まってるオオタカに執拗に絡んでいました。ズームを一番低くして連写した画像がこちら・・・

電波望遠鏡の画像で「これがブラックホールです!」と解説されたときのようなはてな感・・・

最終的にはチョウゲンボウが追い払って決着したようです。カラスが止まっているノスリを追い払うのはよく見ますがこの高度ではカラスにとっては高すぎるし、高い空は縄張りではないので負う必要も無いのかも知れません。一方チョウゲンボウは追い払える能力があるし放っておくと自分たちも獲物にされてしまうので追っていたのかもと思いました。またチョウゲンボウは昼は単独で過ごしているのに二羽が絡んでいたのは、示し合わせたのでは無く遠目にオオタカが見えたからそれぞれ駆けつけたのではないでしょうか。住宅地と田んぼの入り交じるようなところでもチョウゲンボウの密度はそこそこ高いようです。

ちなみにチョウゲンボウとオオタカのバトルはままあるようでしっかり写していらっしゃるサイトがこちら
日本の野鳥識別図鑑「チョウゲンボウ対オオタカ対ハシボソガラスカラス」


さて興奮冷めやらぬなか歩いて行くと砂中学校脇の田んぼに再びチョウゲンボウ発見。電線に止まっています。

余裕のスズメたち

スズメを放置しているのでただ休んでいるだけかと思ったら常に地上をうかがっていました。100m以上離れた農家の庭先に矢のように飛んでいきまたほぼ同じところに戻ってきました。

やはりピンボケ
片足で電線に掴まりもう一方の足は獲物を掴みながらかかとを支えに置く

捕らえた獲物は卵を持ってお腹の膨れ上がったオオカマキリのメスのようです。頭と胸を食いちぎり柔らかい腹だけ一気飲みしました。

最初はメス鳥かと思いましたが近づいてみると頭が青灰色になりかけたオスの若鳥のようです。数分すると今度は田んぼの土嚢の上に降り立ちました。そこで10分以上ときどき首を回してはいますがほぼ不動です。消化中の重い体でカラスに見つからないよう隠れたのかなとも思いましたが違いました。

何かを捕まえたようです。チョウゲンボウは完全に姿が見えなくなってしまってから5分ほどたったのでカメラの液晶をチラ見したときに飛び立ってしまったのかもと思い現場に向かいました。
しかし失敗でした。

彼がまだいるなら止まっていた土嚢のすぐ下の用水路と思っていたのですがいたのはその奥の田んぼの角でした。飛び立ちすぐ見えなくなりました。そして後に残されていたのはこちら

ムクドリ弱の大きさの鳥が食い荒らされていました。まだ食べ終わってなかったのでチョウゲンボウには悪いことをしました。どうやらヒバリのようです。春の水の貼った田んぼではヒバリはあぜ道しか居場所がないので地上でも見つけやすいのですが、10月半ばに帰ってきた冬のヒバリはすき込みされて凸凹になった田んぼの全面が住処で、しかもさえずりもしないので人間ではなかなか見つけられません。

しかし彼は見事にそのヒバリを視認してて近くに歩いてくるまで待ち続けていたのです。生粋のハンターですね。降り立った直後うごめいていたのは押さえ込んでまず息の根を止めていて、その後食べ始めたら私には見えなくなったようです。

もうひとつ驚いたのはその食欲です。私はインコたちを飼っているのですが餌は一日に体重の10%が目安と言われています。もちろん野鳥はるかに体力を使うのでどの種も当然それでは足りないでしょうが、先ほどカマキリを食べまたすぐに今度はチョウゲンボウにしては大きめの鳥を仕留めてものの5分ぐらいで胸肉を食べ尽くしていました。少しずつ移動しながらついばんでいく植物食・雑食のスズメやムクドリとは違い完全に肉食の鳥は食べられるときにいくらでも食べておかないと次のチャンスはなかなかこないからかもしれません。

いずれにしても猛禽類の本気の姿をいくつも見せつけられた一日でした。

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